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感染予防効果あり!!では、来年度以降の集団の健康管理をどうするか

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に様々な予防対策が取り組まれていますが、その多くは、インフルエンザの予防対策と同じであるため、厚生労働省健康局結核感染症課が報告している「インフルエンザの発生状況について」によると一定の良好な所見が認められました。

 今回は、「インフルエンザに関する報道発表資料 2018/2019シーズン」(以下「平成30年度資料」という。)と「インフルエンザに関する報道発表資料 2019/2020シーズン」(以下「令和元年度資料」という。)のそれぞれ45週から10週までの定点当たり報告数をもとに、インフルエンザの感染予防効果と、その結果をもとに来年度以降の集団としての健康管理について提言させていただきます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html


○インフルエンザに関する報道発表資料について

 厚生労働省健康局結核感染症課から、インフルエンザの発生状況を9月から4月にかけて毎週金曜日に公表されています。

 全国に約 5,000 ヶ所の定点医療機関から報告があったインフルエンザ感染者の報告があり、平均が定点あたりの報告数(以下「平均報告数」という。)となります。平均報告数が1.00を上回った時点が流行開始の目安とされ、2019/2020シーズンの流行開始が45週であり、3月22日時点の最新データである10週までを比べることとしました。

 なお、2009年~2018年期間では、1シーズンあたりの平均報告数のピークは全て30を超えています。

【平成30年度資料より】

・45週の平均報告数は0.35

・流行開始は49週であり、平均報告数は1.7

・52週の平均報告数は11.17

・ピークは4週であり、平均報告数は57.09

・10週の平均報告巣は4.12

・45週から10週までの平均報告数の和は293.34(5,000を乗じ1,466,700)

【令和元年度資料より】

・流行開始は45週であり、平均報告数は1.03

・ピークは52週であり、平均報告数は23.24

・4週の平均報告数は18.0

・10週の平均報告数は3.13

・45週から10週までの平均報告数の和は192.75(5,000を乗じ963,750)

【3月22日時点における令和元年度資料で認められた良好な所見】

・ピークの平均報告数が23.24と、平成30年度資料の57.09より減少した。

・45週から10週までの平均報告数の和は192.75と、平成30年度資料の293.34より減少した。

・ピークの平均報告数が過去10年で最小となった。

 以上のことから、予防対策と良好な所見には一定の相関があると認められます。なお、予防対策としては、次の国の取り組みが事例(以下「令和の予防対策」という。)として挙げられます。

①手洗い周知

②咳エチケット(マスク着用勧奨含む)周知

③密集を避ける外出の周知

④感染状況等の情報発信

⑤疑われる症状に関する連絡窓口の設置

⑥特別外来の設置

テレワーク等利用勧奨

⑧イベントについて、中止、延期、規模縮小等の対応要請

⑨学校の休校要請

⑩入国制限措置と入国後の行動制限措置

⑪納税に関する緩和や補助金等


○来年度以降の集団の健康管理をどうするか?

 前述①~⑪の予防対策が行われたことで、インフルエンザに関して良好な所見が認められました。

 さて、集団の健康管理に関して、行政や司法において健康障害因子に基づく健康障害発生の関係性については、石綿における「石綿ばく露作業に従事した労働者に発生した肺がんに関する業務起因性は、肺がん発症のリスクを2倍以上に高める石綿ばく露の有無によって判断すべき」に代表されるように、健康障害因子があることで、無かったときに比べて2倍以上の健康障害が発生した場合に因果関係有りと評価されます。

 インフルエンザに関して、令和の予防対策を行ったことにより、令和元年度資料に比べると平成30年度資料の平均報告数のピークは、約2.46倍になっており、「令和の予防対策をとらないという健康障害因子」でリスクが2倍以上になるという事例が出てしまいました。

 もちろん、平成30年度資料と令和元年度資料の2年分を比べただけであるので、行政や司法が因果関係ありと認めることは考えにくいですが、個人の健康管理の観点の場合、命を失うことになる方や家族を失った方の感情は重く、臨床の現場でもその迫力に圧倒されたことは何度もあり、そういった方々が健康の複合的要因の中で1つの根拠を重要視し、医師に主張されることは多々ありました。令和の予防対策は集団の健康管理として多くの命と健康を守りましたが、来年度以降にどのように集団の健康管理を行っていくかという大きな課題を残したといえます。

 今後の行政の流れとしては、令和の予防対策に関する検討を行い、段階的に予防対策の取り組みを進めていくことになるでしょうが、令和の予防対策の①~④はインフルエンザの予防対策として既に行われていることから、残りの⑤~⑪の対策を来年度以降も続けるには、日経平均が1月17日の24,115.95円から3月19日の16,358.19円に下がったことを鑑みるに、その社会的コストを受け止めるだけの経済力があるとは見込めません。

(個人的には、疾病の予防のために、毎年⑪の納税に関する緩和や補助金の対策が行われると良いなと思いますが。)

 集団の健康リスクは、科学的に見える化し、現実に即した具体的な対策をすることが大事です(1つの方法としてリスクアセスメントがあります。)。企業における令和の予防対策に関しては、予防対策に効果があるということを社内に周知し、社内の健康リスクの低減に使っていただければ良いです。

 さらに、新型コロナウイルスに関する後ろ向きな議論に影響を受け、多くの企業が実害を受けることになりましたが、このようなことが減り、社会が適切に集団の健康管理を理解するように、初めの一歩として、自社の取り組みを徹底して下さい。



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