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労災とそこから派生する労使間の民事訴訟を避けるために

新型コロナウイルスを原因とした労災認定について、7月1日時点で17人が認定され、バスガイドや土木作業員ら4人、医療・介護従事者が13人という報道でした。

 令和2年4月28日付け基補発0428第1号「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(以下「労災通達」という。)によると、業務起因性の考え方は労働基準法施行規則別表第1の2第6号1又は5(以下条文)に該当するとされています。


労働基準法施行規則別表第1の2第6号

細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病

1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患

5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病(以下「その他業務起因性」という」。)


 その他業務起因性については、労災通達1に「調査により感染経路が特定されなくてとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること。」と示されています。

 さらに、国内の医療従事者等以外の場合については、労災通達2の(1)のイ及びウで以下の様に示されています。


イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの

感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの

調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。

この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。

(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務

(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務


 さて、労災認定の業務上外検討会の事務局を担当としていた者としての個人的な見解としては、表現が抽象的であり、次の様な労災申請事例の場合、認定の調整が困難になると感じました。

・不特定多数に接客を行っている従業員について、顧客に新型コロナウイルス感染及び排菌が疑われる場合

・新型コロナウイルス感染及び排菌が疑われる者と業務上接触したが、従業員が業務外で新型コロナウイルス感染及び排菌が疑われる者と接触する機会があった場合

・新型コロナウイルス以外の感染症に関しても、労災通達で認定した事例と同様に、認定するよう申請があった場合 等


 労災申請があった場合、労基署を中心として、実態調査、事業所の作業環境・作業に代表される5管理の状況、医師の科学的見解、一般的な科学の見解、過去の事例等の情報を収集します。その後、必要に応じて検討し、認定につながります。

事業者に影響する点は、事業所の実態調査や5管理について、労基署が情報収集に入ってくる点です。この際、記録や担当者がいない場合は、長い時間インタビューされ、法令に矛盾する点の指摘を受けるおそれがあります。

労災保険は、労災認定が増えて支出が増える場合、その他の各種事業が0.3%であるものの、金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業の保険料率が8.8%であるように、支出に合わせて保険料率を上げてしまえばよいので、行政上の問題はありません。ですが、可能な限り支出を抑えることも必要ですので、事業所の実態調査や5管理についてより厳しい評価が行われることが想定されます。

 今後の、社会的新型コロナウイルス禍の影響で、社会的認識が科学に基づき冷静さを取り戻すか、責任を持たない専門家によるアジテーションの影響で被害が拡大するかによっても、行政の対応は変化すると思いますが、法令に基づく適切な対応を行うにこしたことはありません。

(簡素化して表現すると、事態が発生した場合の『言い訳事項』を想定し、それに対する記録の整理と専門家の見解(リスクアセスメント)による必要十分な対策を行うこと。)

 過去の事例では労災認定がきっかけで、民事訴訟に波及してくることも多々あります。訴訟は労使双方にとって社会的に不健康になってしまうので、そういった事態が発生しないように、安定した経営を目指してください。


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