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事例】メンタル不調に対する早期発見早期対応

ストレスチェックを毎年行っているが、どの様に活用して良いか分からないと言う相談を良く受けます。ストレスチェックを活用する事でメンタルの不調の早期発見、早期対応に役立たせる事が出来ます。ストレスチェック後の対応の事例を紹介致します。


◎事例

 数千人を要する事業所において、ストレスチェックで不良な結果が出たため、産業医に相談に来た従業員がいました。従業員は、頭痛、嘔吐、ぼーっとする感じがして、朝の出社時が辛いとのことでした。また、過去にメンタル疾患を原因として長期休業の経験があり、復職後も定期的に主治医の治療を受けていました。

 まず、産業医として以下の点を確認しました。

①睡眠、食事、自傷他害の希念の有無等を含む心身の状態について

従業員は軽度の食欲低下あったものの、睡眠は6時間程度取れており、自傷他害の希念はないとのことでした。しかし、表情は固く、気分の落ち込みを示唆する訴えがあり、主治医からは休業を勧奨されていました。

産業医として、体調は勤務に耐えられる最低限の水準と評価しました。

②業務及び業務外でのストレッサー(ストレスの原因)について

 業務について、自分の希望している内容ではなく、得意としているものでもない。一緒に業務を行っている人を支援する立場であるが、その人が離職するという話が出ており、自分が主担当になる恐れがあり不安であるとのことでした。

産業医として、ストレッサーが不確定要素に対する過度な不安であり、整理する余地があると評価しました。

③4つのケア(※1)が機能しているかについて

 前回復職時の再発防止対策で、ストレスがかかった時は人に相談することを整理しました。しかし、年齢と役職が近い上司とはコミュニケーションを取れるが、業務をコントロールしている管理職には、業務が自分の能力に合っていない旨を伝えたのみで、充分に相談できていないとのことでした。

産業医として、過去の経験に基づいて4つのケアが概ね機能しているが、管理職級と相談できていない点は改善する必要があると評価しました。

④本人の希望について

 調子は悪いが、長期休業はせずに継続して勤務を行いたいとのことでした。

産業医として、総合的に評価し、本人の希望に添った対応を行うべきと判断し対応を開始しました。


◎対応

 「体調の改善についてのアドバイス」「不確定要素の確認」「管理職との意見交換」を行うよう指導し、人事を通して管理職にも協力をお願いし、1週間程度の短いスパンで経過観察を行った結果、1週間後の面談では、「休みの日に仕事のことを考えずゆっくり休めた。」「一緒に業務を行っている人の進退について確認できた。」「管理職に言いたいことが言えて、管理職もしっかり聴いてくれた。」とのことで、課題となっていた点は改善することができました。しかし、突発的な業務負担の増加による体調悪化を予防するために、時間外勤務に制限を設けて、1ヶ月毎の経過観察を行いました。

 その後、引き続き4つのケアを取り組むことで面談の度に体調は改善し、最終的には、有給休暇等の休みを取ること無く、体調とパフォーマンスが万全となりました。


◎考察

 本事例では、体調不良に対して早期に対応することで、本人にとっては、崩れかけた健康を取り戻すことができ、会社にとってはアブセンティーズム(※2)を無くし、プレゼンティーズム(※3)を最小限とすることができました。

 良好に機能した点としては、本人が4つのケアについて理解をし、可能な範囲で実行していた点にあります。

 本事例では、医師でなければ評価できない点は、体調が勤務に耐えられるか否かのみであり、それ以外の評価及び支援は医師以外でも行うことができます。そこで、産業医の関与を最小限として同等のパフォーマンスを発揮するためには、あらかじめ従業員に4つのケアについて充分な教育を行い、早期発見早期対応という2次予防の視点を大事にするよう意識づけを行うと良いでしょう。


※1 4つのケアとは、従業員自身によるセルフケア、上司等のラインケア、事業所内産業保健スタッフによるケア、事業場外健康管理資源によるケアをいう。

※2 アブセンティーズムとは、従業員が病気で休むことにより失われる生産性をいう。

※3 プレゼンティーズムとは、従業員が出社しているが、体調が万全ではないために失われる生産性をいう。


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