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パワハラ予防(科学的に考える「やりがい搾取予防」)

人間の欲求を段階で示したものに、「マズローの5欲求」という考え方があります。これは、以下の様な段階になっっており、衣食住といった生命の維持に必要な生理的な欲求が満たされて、次の段階の欲求を求めることができるというものです。

・生理的欲求:衣食住等の生命維持に関する欲求

・安全の欲求:経済的安定性等、秩序だった生活の維持に関する欲求

・社会的欲求:他者に受け入れられていることを実感したい欲求

・承認の欲求:他者に尊重されていることを実感したい欲求

・自己実現欲求:自分の能力を最大限に発揮したい欲求

 快適職場とは、このマズローの5欲求に代表される欲求が職場の目的に沿っていて、最小限のエネルギーでその欲求が達成できる職場です。

 例えば、素手で体重の数倍の岩を5km運んで生活費15万円を得るのと、トラックで同じ岩を5km運んで生活費3万円得るのでは、どちらが快適性が高いかはご理解いただけるでしょう。

(参考:法令遵守と利益の向上を両立した快適職場とは

https://www.soumunomori.com/column/article/atc-173780/


◎快適さは「負担の低減」と「目標設定」

 トラックの例では、岩を運ぶ目標は同じで、負担の低減により快適さが生まれることを示しましたが、目標が変わることでも快適さは変わります。

 例えば、意味も無くボールを蹴ることを強いられていた人に、サッカーのルールやサッカーで盛り上がっている人々がいることを伝えることで、ボールを蹴るという行為に意味を感じ、新たな楽しみを見つけることができるでしょう。

(参考:靴屋のセールスマンの話(良いストレス編)

https://www.soumunomori.com/column/article/atc-173802/

 快適さは、負担を低減することと達成感が見込まれる目標を設定することにあります。

 日本は、憲法により職業選択の自由が保障されていますから、従業員は不快な職場よりは快適な職場に移ることになります。


◎「会社の支払うコスト」と「快適さ」の視点から「やりがい搾取」

 マズローの5欲求において、「会社の支払うコスト」は給与や安全衛生対策という形で「生理的欲求」や「安全の欲求」を満たす場合に多く発生します。また、「負担の低減」についてはハード面での設備投資で「会社の支払うコスト」が発生します。

 ここで、「やりがい搾取」について考えてみましょう。給与に比べればコストの少ない「社会的欲求」「承認の欲求」「自己実現欲求」を強化し、「会社の支払うコスト」を最小限にすれば、利益が向上する(売上が変わらない場合)ことになります。従って、一般的に「やりがい搾取」を行っているといわれる企業は「一致団結」「感謝を喜ぼう」「今日の努力が新しい自分につながる」等といった、社会的欲求、承認の欲求、自己実現欲求が満たされるように社員教育を行い、給与や安全衛生対策といった生理的欲求、安全の欲求を満たすこと及びハード面の設備投資を、最小限にします。

 そして、従業員が生理的欲求、安全の欲求を満たされていないと感じたときに「やりがい搾取」という発言が生まれるのです。


パワハラ予防(マズローの5欲求で考える「やりがい搾取予防」)

 「やりがい搾取」の考え方のうち、「社会的欲求」「承認の欲求」「自己実現欲求」を強化し高い目標設定を掲げることについては、良い点です。では、悪い点は、「生理的欲求」、「安全の欲求」を満たすことを最小限にしてしまうことです。

 従って、パワハラ予防としては、従業員の業務の質と量を適切に評価し、それに見合った給与を提供し、同時に安全衛生の取り組みを行うことです。また、従業員の業務の量を下げる設備投資を行っても良いでしょう。

 しかし、そういった取り組みを行っていても、従業員が満たされていないと感じた場合は「やりがい搾取」という発言は出てきてしまいます。従って、従業員には管理職面談等で適切な評価に基づいて給与等を定めていることを情報共有することが必要です。また、安全衛生の取り組みについては、労働安全衛生法令に基づいて安全衛生委員会等において、労使間で調査審議し実行していることを適切に周知し、理解を得ていることが必要です。

 「やりがい搾取」と発言されるおそれのある企業は、高い目標設定を定める文化的な資産が醸成されているといえます。そこに、生理的欲求及び安全の欲求を、従業員が納得できる範囲で達成することができれば、快適な職場構築を見込めます。高い目標設定は大変良い取り組みですが、それのみに依存するのではなく、バランスの良い管理をされると良いでしょう。


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