検索
  • 産業医EX

とある工場の事例にみる不誠実な産業医

◎とある工場の事例(令和元年6月NHK報道)

 とある工場について、NHKから技能実習生の実態について報道がありました。

 その中では、まとめブログによると、労働基準関係法令(平成22年7月の入管法改正により、入国1年目から労働基準関係法令の適用を受けるため。)に関する一部事項としては以下の様な実態があったとのことです。

①あるときは朝7時30分から夜11時まで労働。休憩は15分。朝方まで作業することもある

②ノルマが厳しすぎて指が曲がっており、触るだけで痛いと訴える人も

③残業は月に180時間。だが残業代の支払いは40時間のみ 等

 企業側からの意見はないことから、一概に訴えが事実であるかは不明ですが、①から③に関しては次の法律違反が認められます。

休憩15分:労基法第34条により、①の場合は、1時間以上の休憩を与えなければならない

・ノルマが厳しすぎて指が曲がっており:安衛法第3条により、安全と健康の確保措置をとらなければならない

残業代の支払いは40時間のみ:労基法第24条より、賃金割増賃金を含んで全額を支払うことが義務づけられています。


◎本事例の類似事例に対する産業医学的対応

 本事例は、労働基準関係法令の違法性の疑いを、技能実習生が訴えた事例といえます。

産業医として、対応した類似事例では、次の産業医学の一般的な対応をしました。

(1)産業医面談により本人の訴えを傾聴し、本人の感じている課題を整理

(2)課題のうち、良識の範囲から逸脱した課題と法違反が疑われる客観的事実を整理

(3)管理職と共有して良い事実と本人が共有を希望しない事実を整理

(4)共有して良い事実を軸に、管理職面談を行い、管理職の訴えを傾聴

(5)課題解決の立案をして、関係者で共有し、段階的にPDCAサイクルを廻す

※ 法令違反無く、良識の範囲から逸脱していない課題等は、傾聴し、必要に応じて自身で解決するように支援します。

※ 本人が共有を希望しない事実については、産業医面談で経過観察を行います。

 なお、段階的にPDCAサイクルを廻すことが拒否された場合や不利益対応が発生した場合は、産業医は勧告権の行使を検討する必要があります。また、勧告権が行使された時点で、事業者が労働基準関係法令上の課題を知り得ることになるので、課題のうち違法事項が全て事業者過失責任に変化します。(私は、一般的な対応の段階で、その都度丁寧に説明し理解を得ていたことから、勧告権を行使する事態に至ったことはありません。)


◎本事例発生の原因として疑われる不誠実な産業医

 本事例は、まとめブログによると、工場に残った実習生が仕事中に倒れ、脳出血で意識不明の状態が続いているとのことです。

 本事例では、「28人中8人が保護され」とあることから、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則第16条によると、余程、事業所を分散していない限り、産業医の選任義務があったと考えられます。

産業医は医師として健康障害リスクから企業を守る唯一の役職で、事業者でも代替することはできません。本事例では、産業医が誠実な対応を行っていれば、行政、メディア、SNS等の介入を受ける前に、適切な対応ができたと考えられます。不誠実な産業医(平成31年4月より、労働安全衛生法第13条第3項に産業医の誠実義務が施行されました。)は、従業員だけでなく、管理職、人事担当、事業者と、企業に所属する全ての人に対して災いをもたらし、企業の事故対応コストを不要に増大させます。誠実な産業医の活用による平和な労務管理をお勧めします。


7回の閲覧0件のコメント