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熱中症対策について

これからの季節、増えてくる熱中症。コロナ予防のためのマスクの着用で、熱中症人口が増える事が予想されています。暑熱環境の中、労働することで、脱水、体温の上昇により臓器の血流が低下し、めまい、頭痛、吐き気、意識混濁などの症状が現れ、最悪な場合、死を招きます。最近では室内の作業でも、熱中症になる方が増えています。


公開情報と労働衛生の基本的考えを元に、有効な熱中症対策を考察したいと思います。


◎とある事業所の熱中症対策結果(公開情報より)

とある事業所においては、2011年度に熱中症が23人、その他軽微な熱中症が20人でした。そこで、熱中症対策を開始し、PDCAサイクルを繰り返し実施した結果、徐々に減少し、2017年度には熱中症6人まで抑える事が出来ました。


この事業所は『労働衛生の5管理』を活用し熱中症対策を行いました。


◎労働衛生の5管理

労働衛生の具体的管理方法には、早期発見早期対応の2次予防と根本的予防の1次予防の観点により、以下の5管理と呼ばれる手法があります。


①総括管理(責任者を定め、体制やルールを整える。)

②作業環境管理(作業環境を改善することでリスクを減らす。)

③作業管理(作業を改善することでリスクを減らす。)

④労働衛生教育(健康意識を向上させ、制度等を共有する。)

⑤健康管理(軽度の症状を早期発見し、早期対応する。)

※5管理は、①から⑤の順番に行うと良いです。


◎とある事業所の熱中症対策

とある事業所の熱中症対策では、5管理それぞれについて、以下の様な取り組みがされていました。

①総括管理

とある事業所では、複数の協力企業が連携をとりながら作業をおこなうことから、協力企業と一体となった労働衛生の委員会を設置し、情報共有が行われていました。さらに、熱中症の指導ができる管理者の設置、原則となる統一ルールの策定、高リスク者(新入所者等)の識別化等の体制・制度整備がされていました。

これにより、責任体制の明確化により現場のモラールが向上し、現場の熱中症対策に明確な物差しができることが見込めます。

②作業環境管理

WBGT(湿球黒球温度)を測定し、作業環境を把握する取り組みを行い、WBGT値毎に作業制限の基準などを設けていました。また、屋外作業時に日よけを設置して、WBGT値を下げる取り組みも行われていました。

熱中症対策では、暑熱環境を変化させることが難しいですが、作業管理は予防の基礎になりますので、可能な限り行うべきです。

③作業管理

WBGT値に合わせて、作業時間の短縮等を行い、暑熱ばく露を最小限にしていました。また、クールベストや保冷剤を利用し、暑熱対策を行っていました。さらに、熱中症に罹患した従業員には、入所期間が短い者が多いという過去の経験則をもとに、入所期間1年未満の者には、周囲への注意を喚起するためヘルメットにステッカー貼付等の対策を行っていました。

なお、作業環境管理においては声かけをこまめにする等の熱中症に限らない安全衛生対策が基礎になります。

熱中症対策では作業管理が対策の主になりますので、熱中症に対する危険予知を働かせることは重要です。

④教育

従業員への直接の熱中症教育を行い、熱中症のリスクの理解と対策方法について周知していました。さらに、熱順化の低い者や体調の変化を周囲に伝えづらいコミュニケーションが困難な新規入所者の熱中症リスクが高いことを伝え、そういった者に特に注意喚起を行っていました。

素晴らしい対策も、従業員が理解し実施することで効果が生まれます。教育は対策だけではなく、従業員が前向きに取り組むための意識向上も重要になります。

⑤健康管理

健康診断結果で一定のリスクがある者、自己測定した血圧で著しく高い者及び熱中症チェックシートで不良な判定の者は、熱暑作業につかせない。定期的な水分補給、十分な休憩を挟むことで体調の維持管理を行っていました。さらに、教育に基づいて軽微な症状が出た場合は、速やかに、熱中症管理者及び診療所受診をするように徹底されていました。



健康管理は、①から④の対策を行っても漏れ出てくる体調不良者に速やかに行う処置です。最後の砦がしっかり機能するように対策を行うと共に、熱中症が発生した場合は、最悪の事態にならなかったことを喜びつつ、①から④の対策を見直して、PDCAサイクルを廻しましょう。


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